「想定以上に利益が出ていることが決算直前に分かった」
「法人税の負担を少しでも抑えたい」
「今からでも間に合う節税対策を知りたい」
決算が近づいてから、このような悩みを抱える経営者の方は少なくありません。
決算間近でも実行できる節税対策はあります。ただし、節税のためだけに不要なものを購入したり、翌期の費用を無理に今期へ計上したりする方法はおすすめできません。
重要なのは、まず計上漏れや利用できる制度がないかを確認し、それでも利益が大きく残る場合に、必要な設備投資や従業員への賞与などを検討することです。
この記事では、決算間近でも検討できる節税対策を10個紹介するとともに、利益が出すぎたときの考え方や注意点について税理士の視点から解説します。
目次
決算間近でも節税対策はできる?利益が出すぎた時にまず確認すること
決算直前でも節税対策は可能です。
ただし、「決算日までにお金を払えば、すべて今期の経費になる」というわけではありません。
節税策を検討する前に、まず次の3点を確認しましょう。
まず今期の利益と納税見込額を確認する
最初に行いたいのが、決算着地の予測です。
売上や仕入、経費、減価償却費などを反映し、
- 最終的にどのくらい利益が残りそうか
- 法人税等はいくら程度になりそうか
- 手元資金はいくら残るか
を確認します。
利益額を把握しないまま節税策を実施すると、必要以上に支出して資金繰りを悪化させる可能性があります。
まず数字を確認し、「本当に対策が必要なのか」「どの程度まで利益を圧縮するべきなのか」を判断することが重要です。
節税のためだけに無駄な支出を増やさない
経費を増やせば課税所得は減りますが、会社から現金が出ていくことに変わりはありません。
例えば100万円の不要な支出をして税金が30万円減ったとしても、70万円分の資金は会社から減っています。
そのため、
「税金を払いたくないから何か買う」
という考えではなく、
- いずれ必要になる支出を前倒しする
- 従業員や事業成長につながる支出を行う
という視点で考えることが重要です。
また、金融機関から融資を受ける予定がある企業では、利益を必要以上に圧縮することで決算書上の収益性が低下する可能性もあります。
節税だけでなく、資金繰りや今後の経営計画を踏まえて判断しましょう。
決算日までに「支払えばOK」とは限らない
法人税では、販売費や一般管理費などを当期の損金に算入するためには、原則として決算日までに債務が確定している必要があります。
国税庁では、債務確定について、
- 決算日までに債務が成立している
- 具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
- 金額を合理的に算定できる
という要件を示しています。詳しくは国税庁「債務の確定の判定」をご確認ください。
つまり、契約しただけ、発注しただけ、支払っただけでは当期の損金にならないケースがあります。
決算直前の対策ほど、「いつ支払ったか」だけではなく、「いつ商品を受け取ったか」「いつサービスの提供を受けたか」まで確認することが大切です。
決算間近でもできる節税対策10選
ここからは、法人が決算間近でも検討できる代表的な節税対策を紹介します。
すべての会社に同じ方法が適しているわけではありません。自社の状況や適用要件を確認しながら検討してください。
1.計上漏れしている未払費用を確認する
まず確認したいのが、すでに発生しているにもかかわらず、まだ帳簿に反映されていない費用です。
例えば、
- 外注費
- 通信費
- 水道光熱費
- 各種手数料
- 修繕費
などについて、サービスの提供を決算日までに受けているものの、請求書の到着や支払いが翌期になるケースがあります。
一定の債務確定要件を満たしていれば、まだ支払いが終わっていなくても未払費用・未払金として当期に計上できる可能性があります。詳しくは国税庁「債務の確定の判定」をご確認ください。
新たにお金を使う節税ではないため、決算時には最初に確認しておきたい項目です。
2.決算賞与を支給する
従業員への決算賞与も、利益が出た年度に検討される代表的な決算対策です。
実際の支給が決算後になる場合でも、一定の要件を満たせば、通知を行った事業年度の損金に算入できる場合があります。
主な要件は、
- 各従業員に支給額を通知する
- 通知した従業員全員に、事業年度終了日の翌日から1か月以内に支給する
- 通知した事業年度で損金経理する
ことです。詳しくは国税庁「使用人賞与の損金算入時期」をご確認ください。
例えば「業績が良ければ後で金額を決める」といった状態ではなく、各従業員への支給額を確定させたうえで通知する必要があります。
従業員への還元やモチベーション向上にもつながるため、利益が大きく出た企業では検討しやすい方法の一つです。
3.短期前払費用を活用する
家賃や保守料など、継続的にサービスの提供を受ける費用については、「短期前払費用」の特例を利用できる場合があります。
通常、翌期分の費用を前払いしても、原則として翌期の費用です。
しかし、支払日から1年以内に提供を受ける継続的な役務に対する費用を支払い、その支払額を継続して支払日の属する事業年度の損金として処理している場合には、支払時に損金算入することが認められています。詳しくは国税庁「短期前払費用」をご確認ください。
例えば、一定の要件を満たす家賃や保守サービス料などが候補になります。
ただし、利益が出た年度だけ急に1年分を前払いするといった利益調整目的の処理は認められない可能性があります。国税庁も、利益が出た年だけまとめて支払うような利益操作目的の支出は、この取扱いから排除する必要があるとしています。
契約内容や継続性まで確認して利用しましょう。
4.40万円未満の少額減価償却資産を活用する
パソコンやモニター、事務機器、備品など、近いうちに必要になる設備がある場合は、決算前に購入する方法もあります。
一定の中小企業者等では、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」により、一定金額未満の資産を取得し事業の用に供した場合、その取得価額を損金算入できる制度があります。
この制度は2026年度税制改正で基準額が変更されています。
2026年3月31日以前に取得等:30万円未満
2026年4月1日以後に取得等:40万円未満
2026年4月1日以後は40万円未満へ引き上げられました。年間の合計額300万円という上限は引き続き設けられています。詳しくは国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」をご確認ください。
インターネット上には現在も「30万円未満」と説明している記事がありますが、取得時期によって基準が異なるため注意しましょう。
また、単に決算日前に注文・購入しただけではなく、原則としてその事業年度中に事業の用に供していることも重要です。
節税のために不要なものを買うのではなく、「来期購入する予定だったパソコンを今期に導入する」といった、本来必要な設備投資を前倒しする方法として検討するとよいでしょう。
5.必要な修繕を決算前に実施する
事務所、店舗、工場、機械設備などに修繕が必要な箇所がある場合、予定していた修理を決算前に行う方法があります。
固定資産の通常の維持管理や原状回復のために要した支出は、原則として修繕費として損金算入できます。
一方、
- 建物に新しい設備を追加する
- 用途変更を目的に大規模改装する
- 機械の性能を大幅に向上させる
といったように、資産の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は「資本的支出」となり、一括で修繕費にできないことがあります。詳しくは国税庁「修繕費とならないものの判定」をご確認ください。
「修理という名目なら経費になる」というわけではなく、実際の工事内容で判断される点に注意が必要です。
6.使っていない固定資産を除却する
帳簿を確認すると、すでに使用していない古い機械や設備、什器備品などが固定資産として残っているケースがあります。
実際に廃棄した資産について、帳簿価額が残っていれば、一定の場合に除却損を計上できます。
また、物理的に廃棄していなくても、
- 今後事業に使用する可能性がない
- 使用価値がなくなっている
など一定の条件を満たした場合には、「有姿除却」が認められることもあります。
ただし、単に「使っていない」というだけで自由に損金計上できるものではありません。
対象資産の現況や今後使用しないことを確認し、廃棄した場合には写真や廃棄資料など、事実関係を確認できる資料を残しておくことも大切です。
7.不良在庫・陳腐化した棚卸資産を整理する
商品や材料などの在庫を持つ会社では、決算前に棚卸資産の状態を確認しましょう。
例えば、
- 破損して販売できない商品
- 長期間売れていない商品
- 季節を過ぎて通常価格では販売できなくなった商品
- 新製品の登場によって著しく価値が下がった旧製品
などが残っている場合があります。
ただし、「売れなさそうだから」という理由だけで自由に帳簿価額を引き下げることはできません。
国税庁では、季節商品の売れ残りで今後通常の価格では販売できないことが明らかな場合や、型式・性能・品質等が著しく異なる新製品の登場で通常販売が困難になった場合などを、著しい陳腐化の例として示しています。
不用品を実際に廃棄する場合には、廃棄した事実を確認できる資料を残しておくとよいでしょう。
8.貸倒引当金を計上できないか確認する
取引先への売掛金や貸付金などがある企業では、貸倒引当金を計上できる場合があります。
対象となる中小法人などでは、期末の一定の金銭債権について、過去の貸倒実績に基づく実績繰入率のほか、一定の要件のもと法定繰入率を使って貸倒引当金の繰入限度額を計算できる場合があります。詳しくは国税庁「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金」をご確認ください。
貸倒引当金は、設備購入のように新たな資金支出を伴わずに損金を計上できる可能性がある点が特徴です。
ただし、「売掛金があるから好きな金額を引当金にできる」というものではありません。
対象となる債権や限度額を確認して計上する必要があります。
9.経営セーフティ共済への加入・前納を検討する
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先の倒産による連鎖倒産や経営難に備えるための制度です。
加入要件を満たす法人の場合、事業年度中に払い込んだ掛金を損金に算入できます。
また、前納期間が1年以内であれば、前納掛金についても支払った事業年度の損金に算入できます。
ただし、決算直前に新規加入する場合には手続きの期限にも注意が必要です。
中小機構によると、法人が当該事業年度の加入とするためには決算日までに加入申込手続きを完了する必要があり、掛金を当該事業年度の損金とする場合は事業年度内の最終営業日までに中小機構へ着金する必要があります。
また、掛金を支払う以上、手元資金は減少します。
単純な節税商品として考えるのではなく、制度の目的や資金繰りを理解したうえで利用しましょう。
10.利用できる税制優遇・税額控除を再確認する
最後に確認したいのが、すでに行った設備投資や賃上げなどについて、利用できる税制優遇を取りこぼしていないかという点です。
節税というと「経費を増やす」方法を考えがちですが、制度によっては所得から費用を差し引くのではなく、計算された税額から一定額を控除できる「税額控除」を利用できる場合があります。
設備投資や給与の増加など、今期すでに行った取り組みが税制優遇の対象になることもあります。
決算直前に新しい支出をする前に、
「すでに適用できる制度がないか」
を税理士と確認することも重要な決算対策です。
決算直前の節税対策を「お金が出ていくか」で比較
節税対策を考えるときは、「いくら経費になるか」だけではなく、「会社から新たにお金が出ていくか」という視点で比較することが大切です。
| 節税対策 | 新たな資金流出 | 決算直前の実行性 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 未払費用の確認 | 原則なし | 高い | 債務確定要件を確認 |
| 決算賞与 | あり | 高い | 通知・支給期限等の要件 |
| 短期前払費用 | あり | 比較的高い | 1年以内・継続処理など |
| 少額減価償却資産 | あり | 比較的高い | 事業供用・対象要件 |
| 修繕費 | あり | 比較的高い | 資本的支出との区分 |
| 固定資産の除却 | 原則少ない | 比較的高い | 実態・証拠資料 |
| 不良在庫の整理 | 原則少ない | 比較的高い | 評価損・廃棄の要件 |
| 貸倒引当金 | 原則なし | 高い | 対象法人・繰入限度額 |
| 経営セーフティ共済 | あり | 手続時期による | 加入・納付期限 |
| 税制優遇の確認 | 原則なし | 高い | 各制度の適用要件 |
利益が大きく出たからといって、最初から設備や商品を購入する必要はありません。
まず、
①計上漏れしている費用がないか
②新たな支出をせずに適用できる処理・制度がないか
③今後必要になる支出を前倒しできないか
という順番で確認するとよいでしょう。
決算間近の節税でやってはいけない3つのこと
決算直前は時間が限られているため、節税を急ぐあまり不適切な処理を行わないよう注意が必要です。
節税のためだけに不要なものを買う
経費を増やせば税金は減りますが、それ以上に会社のお金が減るケースがほとんどです。
節税目的だけで不要なパソコンや備品、サービスなどを購入するのではなく、
- 本当に会社に必要か
- 来期以降の売上や生産性向上につながるか
を判断しましょう。
必要な投資を前倒しし、その結果として税負担も抑えられる、という順番が理想です。
翌期の費用を無理に今期へ計上する
決算日までに支払ったからといって、翌期に提供される商品・サービスを自由に当期の経費にできるわけではありません。
短期前払費用など一定の例外はありますが、原則として費用を計上する時期にはルールがあります。
決算対策を理由に、本来翌期に計上すべき経費を今期へ移すことは避けましょう。
売上を翌期へずらす・架空経費を計上する
節税と、売上の意図的な計上漏れや架空経費の計上はまったく別のものです。
すでに当期の売上として計上すべき取引を意図的に翌期へずらしたり、実態のない経費を作ったりしてはいけません。
適切な節税とは、税法上認められた制度や会計処理を利用して税負担を適正化することです。
決算直前だからこそ、無理な処理を行わないことが重要です。
利益が出すぎたと分かったらいつ税理士に相談すべき?
決算対策は、早く始めるほど選択肢が広がります。
理想は決算2〜3か月前
決算2〜3か月前であれば、利益予測を行ったうえで、
- 設備投資
- 修繕
- 賞与
- 共済制度
- 税制優遇
など、複数の選択肢を比較できます。
資金繰りへの影響も含めて検討できるため、決算直前になって慌てる必要がありません。
1か月前でもできる対策はある
決算まで1か月を切っていても、
- 未払費用の確認
- 固定資産や在庫の整理
- 決算賞与
- 必要な設備の導入
- 税制優遇の確認
など、検討できる対策はあります。
「もう遅い」と判断せず、まずは現在の利益予測と帳簿の状況を確認してみましょう。
決算日を過ぎると選択肢は大幅に減る
決算日を過ぎると、新たな設備投資や修繕、当期中の支払いなどは基本的に間に合いません。
もちろん、決算整理によって未払費用や減価償却費などを正しく反映することはできます。
しかし、経営者が選択できる対策は大幅に少なくなります。
そのため、節税対策は「決算が終わってから税額を知る」のではなく、期中から利益を把握し、必要に応じて対策することが重要です。
浅野税務会計事務所の法人向け税務顧問では、毎月の経理データや帳簿を確認する月次監査を行い、財務報告や会計・税務上の問題点の確認、改善策の提案、決算申告まで対応しています。
決算直前の節税だけではなく、年間を通じて税負担や資金繰りを考えていきたい場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
決算の節税対策に関するよくある質問
Q.決算1週間前でもできる節税対策はありますか?
決算1週間前でもできる対策はあります。
例えば、未払費用の確認、固定資産・在庫の整理、利用できる税制優遇の確認などです。
一方、設備投資については決算日までに事業の用に供する必要があるケースがあり、共済なども手続期限があります。
時間が限られているため、現在の数字を確認したうえで優先順位を決めることが重要です。
Q.決算日を過ぎてから節税することはできますか?
決算日を過ぎてから新たに取引を行い、その支出を過去の事業年度の経費にすることは原則できません。
ただし、決算日までにすでに発生していた未払費用の計上など、決算整理によって適切に反映できる項目はあります。
そのため、決算後であっても計上漏れがないか確認する価値はあります。
Q.利益が出すぎた場合、まず何を確認すべきですか?
まずは正確な利益見込額と納税見込額を確認しましょう。
そのうえで、未払費用などの計上漏れ、貸倒引当金、固定資産や在庫、利用可能な税制優遇など、新たな資金支出を伴わない項目から確認することをおすすめします。
Q.税金を払うくらいなら経費を使った方が得ですか?
必ずしも得とは限りません。
経費を使えば課税所得は減りますが、その分会社の現金も減ります。
事業に必要な支出であれば有効ですが、節税だけを目的に不要なものを購入すると、結果として会社に残るお金が減ってしまいます。
税額だけではなく、支出後にいくら手元資金が残るかで判断しましょう。
Q.決算賞与をまだ支払っていなくても損金にできますか?
一定の要件を満たせば、決算後に支給する賞与でも通知した事業年度の損金にできる場合があります。
主な要件は、各従業員へ支給額を通知し、事業年度終了日の翌日から1か月以内に通知した全員へ支払い、その事業年度で損金経理することです。
実際の運用では要件を満たしているか事前に確認しましょう。
Q.30万円未満の資産は現在も一括で損金にできますか?
一定の中小企業者等が利用できる少額減価償却資産の特例は、2026年度税制改正によって基準額が変更されています。
2026年3月31日以前に取得等した資産は「30万円未満」でしたが、2026年4月1日以後に取得等する資産については「40万円未満」へ引き上げられています。
年間合計300万円という上限は引き続き設けられています。
過去の記事や資料では30万円未満と記載されているケースもあるため、取得時期を確認しましょう。
まとめ|決算間近では「使えるお金を減らさない節税」から確認しよう
決算間近でも、節税対策として検討できることはあります。
代表的なものとして、
- 未払費用の確認
- 決算賞与
- 短期前払費用
- 40万円未満の少額減価償却資産
- 修繕費
- 固定資産の除却
- 不良在庫の整理
- 貸倒引当金
- 経営セーフティ共済
- 税制優遇・税額控除の確認
などがあります。
ただし、利益が出たからといって、とにかくお金を使えばよいわけではありません。
まずは計上漏れや、新たな資金支出を伴わずに利用できる制度がないかを確認し、そのうえで本来必要な設備投資や賞与などを検討することが大切です。
また、決算直前になるほど実行できる対策は限られます。
理想は期中から利益を把握し、納税額や資金繰りを予測しながら計画的に対策することです。
浅野税務会計事務所では、法人向けの税務顧問として月次監査、税務相談、決算申告などに対応しています。決算対策や節税について「自社の場合は何をするべきか分からない」という方は、お気軽にご連絡ください。