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インボイス経過措置が延長|令和8年改正の3割特例・控除率変更

インボイス経過措置が延長|3割特例・控除引下げスケジュール【令和8年改正】

令和8年度税制改正により、インボイス制度に関する経過措置が見直されました。

特に大きな変更は、次の2点です。

  • インボイス登録をきっかけに免税事業者から課税事業者となった個人事業者について、2割特例終了後に「3割特例」が設けられる
  • 免税事業者などからの仕入れについて認められている仕入税額控除の経過措置が2年間延長され、控除割合が「80%→70%→50%→30%→0%」へ変更される

令和8年度税制改正を盛り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律案」は、令和8年(2026年)3月31日に成立しています。したがって、今回の内容は税制改正大綱の検討段階ではなく、成立した改正内容を前提として確認する必要があります。

特に注意したいのが、「インボイスの経過措置が延長された=現在の2割特例や80%控除がそのまま延長された」という意味ではないことです。

2割特例は原則として予定どおり終了し、一定の個人事業者について新しく3割特例へ移行します。一方、買い手側の仕入税額控除については、当初予定されていた「80%→50%→0%」という流れが緩和されました。

この記事では、令和8年度税制改正によってインボイス制度の経過措置がどのように変わったのか、3割特例の対象者や簡易課税との違い、仕入税額控除の新しいスケジュールまで詳しく解説します。

目次

令和8年度税制改正でインボイス経過措置はどう変わった?

まず、今回の改正内容を整理しておきましょう。

インボイス制度の経過措置には、大きく分けて「売り手側」と「買い手側」の2種類があります。

区分 改正前 令和8年度改正後
免税事業者から課税事業者になった事業者の負担軽減 2割特例 個人事業者について3割特例を新設
免税事業者などからの仕入税額控除 80%→50%→0% 80%→70%→50%→30%→0%
仕入税額控除の経過措置終了 令和11年9月30日 令和13年9月30日
1事業者当たりの経過措置対象仕入額の上限 10億円 1億円

国税庁によると、免税事業者などインボイス発行事業者以外からの課税仕入れについて一定割合を控除できる経過措置は、適用期限が2年間延長されました。

つまり、「すべての特例がそのまま2年間延長された」という改正ではありません。

2割特例は終了する一方、個人事業者には3割特例を設け、買い手側の仕入税額控除については引下げを緩やかにするというのが今回の改正のポイントです。

2割特例は終了|個人事業者には「3割特例」が新設

2割特例とは?

2割特例とは、インボイス制度をきっかけに免税事業者からインボイス発行事業者となり、消費税の課税事業者になった事業者の負担を軽減する制度です。

通常の消費税計算とは異なり、要件を満たせば、

納付する消費税額=売上に係る消費税額×20%

として計算できます。

2割特例の対象となるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間です。個人事業者の場合は令和8年分が最後の適用年となります。法人については事業年度によって対象となる最後の課税期間が異なる場合があります。

2割特例がそのまま延長されるわけではない

令和8年度税制改正では、2割特例そのものを延長するのではなく、一定の個人事業者を対象として新たに「3割特例」が設けられました。

3割特例を利用すると、

納付する消費税額=売上に係る消費税額×30%

として消費税額を計算できます。

対象となるのは、令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告です。

したがって、個人事業者の場合は、

令和8年分まで:2割特例

令和9年分・令和10年分:3割特例

という流れになります。

3割特例を利用できるのは個人事業者のみ|法人は対象外

3割特例で最も注意したいのが、法人は対象にならないことです。

国税庁が示している主な適用要件は次のとおりです。

  • 個人事業者であること
  • 基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
  • インボイス発行事業者の登録を受けていること

また、インボイス発行事業者の登録を受けたことにより、免税事業者から課税事業者になった個人事業者を対象とする措置です。

基準期間は原則として適用を受ける年の2年前です。

そのため、

3割特例を適用する年 基準期間
令和9年分 令和7年
令和10年分 令和8年

となります。

一方、法人については3割特例を利用できません。

現在2割特例を利用している法人は、2割特例終了後、原則として一般課税または簡易課税によって消費税を計算することになります。

また、個人事業者であっても、課税売上高や課税期間の状況などによって3割特例を適用できない場合があります。自分が対象になるかどうかは、適用する年ごとに確認することが重要です。

仕入税額控除の経過措置も2年間延長|80%から70%へ

令和8年度税制改正のもう一つの大きな変更が、免税事業者などから仕入れた場合の「仕入税額控除」に関する経過措置です。

そもそも仕入税額控除とは?

消費税を納める事業者は、原則として売上時に受け取った消費税から、仕入れや経費の支払い時に負担した消費税を差し引いて納付税額を計算します。

この仕組みが「仕入税額控除」です。

インボイス制度開始後は、原則としてインボイス発行事業者から交付された適格請求書などを保存することが仕入税額控除の要件となっています。

ただし、制度開始による急激な負担増を避けるため、インボイスを発行できない免税事業者などからの仕入れについても、一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。

令和8年9月30日までは80%控除

現在は、免税事業者などインボイス発行事業者以外から行った課税仕入れについて、要件を満たせば仕入税額相当額の80%を控除できます。

この80%控除は、令和8年(2026年)9月30日までです。

もともとは、その後50%控除へ引き下げられる予定でした。

しかし、令和8年度税制改正によって引下げ幅が緩和され、令和8年10月1日からはまず70%控除となります。

【新旧比較】仕入税額控除の引下げスケジュール

改正前と改正後を比較すると、次のようになります。

期間 改正前 改正後
令和5年10月1日~令和8年9月30日 80% 80%
令和8年10月1日~令和10年9月30日 50% 70%
令和10年10月1日~令和11年9月30日 50% 50%
令和11年10月1日~令和12年9月30日 0% 50%
令和12年10月1日~令和13年9月30日 0% 30%
令和13年10月1日以降 0% 0%

つまり、改正後のスケジュールは、

80% → 70% → 50% → 30% → 0%

となります。

特に重要なのは、令和8年10月1日に80%からいきなり50%へ下がる予定だったものが、70%控除という新しい段階を挟む形に変更されたことです。

さらに、経過措置の最終期限も令和11年9月30日から令和13年9月30日まで2年間延長されています。

免税事業者との取引が多い課税事業者にとっては、当初予定されていたよりも税負担の増加が緩やかになる改正といえます。

ただし、控除割合自体は段階的に縮小していくため、「延長されたから何も対応しなくてよい」というわけではありません。

経過措置を利用できる仕入額の上限は10億円から1億円へ

今回の改正では、仕入税額控除の経過措置について、控除割合や期間だけでなく適用上限額も変更されています。

一のインボイス発行事業者以外の者から行った課税仕入れの税込合計額が、その年または事業年度で1億円を超える場合、1億円を超える部分について経過措置を適用できません

改正前の上限は10億円でした。

この見直しは、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

一般的な小規模事業者では影響しないケースもありますが、特定の免税事業者や個人事業者への外注・仕入れが大きい企業では注意が必要です。

3割特例と簡易課税はどちらを選ぶべき?

3割特例の対象となる個人事業者の場合、「3割特例を使うべきか、それとも簡易課税を選ぶべきか」という問題も出てきます。

簡易課税制度とは、実際に支払った消費税額を集計する代わりに、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使って納税額を計算する制度です。

基準期間における課税売上高が5,000万円以下などの要件を満たす事業者が対象となります。

国税庁が定めるみなし仕入率は次のとおりです。

事業区分 主な業種 みなし仕入率
第1種 卸売業 90%
第2種 小売業など 80%
第3種 製造業・建設業など 70%
第4種 その他の事業 60%
第5種 サービス業など 50%
第6種 不動産業 40%

3割特例は、売上税額の70%を仕入税額とみなして差し引き、結果として売上税額の30%を納付する考え方です。

そのため、単純にみなし仕入率だけを比較すると、

  • 卸売業:簡易課税の90%の方が高い
  • 小売業:簡易課税の80%の方が高い
  • 製造業・建設業など:70%で同水準
  • その他・サービス業・不動産業:3割特例の70%の方が高い

という違いがあります。

ただし、複数の事業を行っている場合や売上構成、適用要件などによって実際の計算結果は変わります。

また、簡易課税制度は一度選択すると原則として2年間継続して適用する必要があるため、目先の1年だけで判断するのではなく、今後の売上や事業内容まで含めて検討することが重要です。

2割特例・3割特例から簡易課税へ移行しやすくなる措置も新設

通常、簡易課税制度を利用するためには、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

しかし、令和8年度税制改正では、2割特例または3割特例を利用した後、簡易課税へ移行しやすくするための措置も設けられました。

2割特例・3割特例を適用した翌課税期間から簡易課税を利用する場合、一定の要件のもと、その課税期間の申告期限までに届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税を適用できるようになります。

特に現在2割特例を利用している法人は3割特例を使えないため、2割特例終了後に一般課税と簡易課税のどちらを選択するか、早めに比較しておくことが重要です。

個人事業者についても、3割特例が利用できるのは令和9年分・令和10年分の2年間です。

その後も事業を継続するのであれば、一般課税または簡易課税へ移行することを前提に、今のうちから消費税の計算方法を検討しておく必要があります。

免税事業者との取引がある企業は令和8年10月までに確認を

仕入税額控除の経過措置が2年間延長されたとはいえ、免税事業者との取引が多い企業では影響を確認しておく必要があります。

特に確認したいのは次の点です。

1.取引先のインボイス登録状況を確認する

まず、仕入先や外注先のうち、インボイス発行事業者でない相手がどの程度いるかを把握しましょう。

インボイス発行事業者との取引であれば、原則として適格請求書等を適切に保存することで仕入税額控除を受けられます。

一方、免税事業者などとの取引では、経過措置の控除割合が段階的に下がっていきます。

2.80%から70%への変更に対応する

令和8年10月1日から、経過措置の控除割合は80%から70%になります。

会計ソフトなどで「80%控除」として処理している取引については、新しい70%控除への対応状況を確認する必要があります。

3.将来の税負担まで試算する

令和8年10月から70%、令和10年10月から50%、令和12年10月から30%と、控除割合は今後段階的に下がっていきます。

免税事業者への外注費や仕入額が大きい企業ほど、控除割合の低下による消費税負担の影響も大きくなります。

令和8年10月時点だけを見るのではなく、最終的に経過措置が終了した場合まで含めて資金繰りへの影響を確認しておくことが重要です。

個人事業者は令和9年以降の消費税計算方法を早めに決める

現在2割特例を利用している個人事業者にとって、令和9年は大きな転換点です。

主な選択肢は、

  • 3割特例
  • 簡易課税
  • 一般課税

です。

3割特例を利用できるのであれば計算は比較的シンプルですが、業種によっては簡易課税の方が有利になる場合もあります。国税庁も、業種や仕入れの状況によっては簡易課税制度の方が有利になる場合があると案内しています。

また、令和10年分で3割特例が終了した後は、その先の計算方法も考えなければなりません。

「3割特例があるから令和10年までは何も考えなくてよい」のではなく、今後の売上規模や法人成りの予定なども含めて、中長期的に消費税の負担を確認することが大切です。

インボイス経過措置に関するよくある質問

Q. インボイスの経過措置はいつまで延長されましたか?

A. 免税事業者などからの仕入れについて一定割合の仕入税額控除を認める経過措置は、令和8年度税制改正によって2年間延長され、令和13年(2031年)9月30日までとなりました。

令和13年10月1日以降は、この経過措置による仕入税額控除はできなくなります。

Q. 2割特例も2年間延長されるのですか?

A. いいえ。

現在の2割特例がそのまま2年間延長されるわけではありません。

2割特例は令和8年9月30日までの日の属する課税期間で終了し、一定の個人事業者については令和9年分・令和10年分に「3割特例」を利用できる仕組みとなります。

Q. 法人でも3割特例を利用できますか?

A. できません。

3割特例は個人事業者を対象とする制度であり、法人は対象外です。法人が2割特例終了後も消費税の課税事業者である場合、基本的には一般課税または簡易課税によって申告することになります。

Q. 令和8年10月から80%控除は50%控除になりますか?

A. いいえ。

もともとは令和8年10月から50%控除へ引き下げられる予定でしたが、令和8年度税制改正によって新たに70%控除が設けられました。

そのため、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%控除となります。

Q. 3割特例と簡易課税はどちらが有利ですか?

A. 業種や事業内容によって異なります。

簡易課税のみなし仕入率は40%から90%まで業種によって異なるため、3割特例より簡易課税の方が納税額を抑えられるケースもあります。

また、簡易課税には適用要件や届出、原則2年間の継続適用などのルールがあります。単年度の納税額だけでなく、今後の売上や事業内容も含めて比較することが重要です。

まとめ|「延長されたから安心」ではなく次の制度への準備を

令和8年度税制改正によって、インボイス制度に関する経過措置は大きく見直されました。

今回のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 2割特例は予定どおり終了する
  • 一定の個人事業者には令和9年分・令和10年分の「3割特例」が新設される
  • 法人は3割特例を利用できない
  • 免税事業者などからの仕入税額控除は80%から70%へ引き下げられる
  • その後、70%→50%→30%と段階的に引き下げられる
  • 経過措置の最終期限は令和13年9月30日まで2年間延長される
  • 経過措置を利用できる一の相手方からの仕入額の上限は10億円から1億円へ引き下げられる
  • 2割特例・3割特例から簡易課税へ移行しやすくする措置も設けられる

「インボイスの経過措置が延長された」という部分だけを見ると、事業者の負担が単純に先送りされたように感じるかもしれません。

しかし実際には、2割特例の終了、3割特例の新設、80%控除から70%控除への変更など、令和8年以降は複数のルールが順番に変わっていきます。

現在2割特例を利用している方は「終了後にどの計算方法を選ぶのか」、免税事業者との取引がある企業は「控除割合の低下によって納税額がどの程度変わるのか」を事前に確認しておくことが重要です。

浅野税務会計事務所では、法人・個人事業者の税務相談や消費税申告、記帳についてサポートしています。法人向け・個人向けの税務顧問では、経理データや帳簿の確認、税務相談、申告、インボイス制度に伴う記帳対応などにも対応しています。

インボイス制度の改正によって「自社の消費税はいくら変わるのか」「3割特例と簡易課税のどちらを選べばよいのか」など判断に迷う場合は、制度が切り替わる前に確認しておくことをおすすめします。

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