予定納税は前年の所得税額などを基準に計算されるため、今年の業績が悪化していても、その状況が自動的に反映されるわけではありません。ただし、一定の条件を満たす場合は、予定納税の減額申請によって第1期や第2期の納税額を減らせる可能性があります。
この記事では、予定納税の減額申請ができる条件、期限、申請書の書き方、必要書類、申請後の流れを具体的に解説します。売上減少、休業、廃業などにより資金繰りに不安を感じている個人事業主や不動産所得のある方は、ぜひ参考にしてください。
目黒区自由が丘で60年以上にわたり地域の税務相談を受けてきた浅野税務会計事務所の実務的な視点も交え、よくある失敗とその対策までお伝えします。
目次
予定納税の減額申請とは
予定納税の減額申請が必要になる仕組み
税務署から送られる通知書には、第1期と第2期の予定納税額が記載されています。通常は自分で税額を計算して申告する必要はありません。
問題となるのは、予定納税額が主に前年の所得を基準としている点です。例えば、自由が丘で小売店を営む個人事業主が、前年は好調だったものの、今年に入って売上が大きく減少したとします。この場合も、何もしなければ前年の税額を基にした予定納税額を納めることになります。
予定納税として納めすぎた税金は、確定申告で最終的に精算されます。確定した所得税額より予定納税額の方が多ければ還付を受けられます。しかし、一度納付すると、確定申告まで資金が戻らない可能性があります。資金繰りへの影響が大きい場合は、還付を待つのではなく、予定納税の減額申請を検討することが重要です。
予定納税の減額申請ができる主な条件
減額申請を検討できる代表的なケースは、次のとおりです。
- 売上や利益の減少:取引先の減少、店舗の客数減少、原材料費の上昇などにより、前年より所得が下がる見込みがある
- 休業または廃業:年の途中で事業を休止した、個人事業を廃業した、法人化によって個人の事業所得が減少した
- 災害や盗難による損失:店舗や事業用資産に被害が発生し、所得が大きく減少する
- 所得控除の増加:多額の医療費が発生した、扶養家族が増えた、小規模企業共済等掛金控除が増えた
- 不動産所得の減少:賃貸物件の空室、家賃の減額、修繕費の増加などがあった
単に納税額が高いと感じるだけでは、予定納税の減額申請は認められません。売上台帳や試算表などを使い、今年の所得税額が減る見込みを数字で説明する必要があります。最終判断は専門家に確認してください。
予定納税の減額申請の期限と必要書類
予定納税の減額申請は7月と11月が期限
| 申請時期 | 対象となる予定納税額 | 判断の基準日 |
|---|---|---|
| 7月の減額申請 | 第1期分と第2期分 | 6月30日時点の状況 |
| 11月の減額申請 | 第2期分 | 10月31日時点の状況 |
7月の減額申請は、原則として7月1日から7月15日までに行います。11月の減額申請は、原則として11月1日から11月15日までです。ただし、期限の日が土曜日、日曜日、祝日などに当たる場合は、翌開庁日になることがあります。令和8年分の11月の提出期限は11月16日です。
予定納税の納付期限は、減額申請の期限より後に設定されています。令和8年分では、第1期の納期限は7月31日、第2期の納期限は11月30日です。納付期限まで余裕があると思っていると、減額申請の期限を過ぎるおそれがあります。
制度は変更される可能性があるため、最終的な判断は必ず最新情報を確認してください。
予定納税の減額申請書と添付資料
申請書だけでは所得の減少を十分に説明できない場合があります。そのため、申告納税見積額の計算根拠となる資料も準備します。
- 売上が減少した場合:月別売上台帳、前年同月との比較表、請求書、受注状況が分かる資料
- 利益が減少した場合:試算表、総勘定元帳、経費明細、今後の収支見込表
- 休業や廃業の場合:廃業届、休業を確認できる書類、店舗の解約通知、取引終了に関する資料
- 不動産所得が減少した場合:入居状況表、賃貸借契約の解約通知、修繕費の見積書や請求書
目黒区内の個人事業主からも、売上は減ったものの帳簿が数か月分たまっており、期限までに所得を見積もれないという相談があります。予定納税の通知書が届いた段階で、少なくとも6月末までの記帳を終わらせることが対策になります。
資料が多ければよいわけではありません。前年実績、今年の実績、年末までの見込みが一続きで確認できる資料をそろえることが大切です。
予定納税の減額申請の書き方と注意点
予定納税の減額申請額を見積もる方法
例えば、6月末までの事業所得が180万円で、7月以降は月20万円の所得が見込まれる場合、年間の事業所得見込みは300万円です。ここから社会保険料控除、基礎控除、扶養控除などを差し引き、所得税及び復興特別所得税を計算します。
見積もりは、次の順番で作成すると整理しやすくなります。
- 実績を集計する:基準日までの売上、仕入、経費を帳簿から集計する
- 年末までを予測する:契約状況や前年の季節変動を踏まえて、残りの収支を見積もる
- 所得控除を確認する:社会保険料、医療費、扶養関係などの見込みを整理する
- 税額を計算する:所得税率と各種税額控除を反映し、申告納税見積額を算出する
申請理由欄には、売上が減ったという結論だけでなく、いつから、何が原因で、どの程度減少し、年間所得がいくらになる見込みかを記載します。
例えば、主要取引先との契約が終了し、1月から6月までの売上が前年同期比で30%減少したため、6月末までの実績と今後の受注見込みを基に年間所得を再計算した、という流れで説明します。
予定納税の減額申請でよくある失敗
次に多いのが、売上だけを見て所得を判断するケースです。所得税は、原則として売上ではなく、売上から必要経費などを差し引いた所得を基に計算します。売上が減っていても経費が大幅に減っていれば、税額が想定ほど下がらない可能性があります。
反対に、売上が前年と同程度でも、大規模修繕、外注費、設備関連費用などが増え、所得が減る場合があります。売上だけで申請の可否を判断せず、年間の損益を確認する必要があります。
また、予定納税の減額申請をすると、申請額がそのまま認められるとは限りません。税務署は提出内容を確認し、承認、一部承認、却下のいずれかを決定します。
減額申請後に売上が回復し、確定申告の税額が増えた場合は、確定申告で不足分を納付します。減額申請をしたからといって、年間の所得税そのものが免除されるわけではありません。納税資金をすべて運転資金に使わず、業績の回復に応じて資金を確保しておくことが大切です。
税務・法令に関する判断を伴うため、最終判断は専門家に確認してください。
まとめ|予定納税の減額申請は期限前の準備が重要
- 対象条件を確認する:売上減少、休業、廃業、経費増加などにより、今年の申告納税見積額が予定納税基準額を下回るか確認します
- 期限を間違えない:第1期と第2期を減額する7月申請と、第2期のみを減額する11月申請では期限と基準日が異なります
- 数字の根拠をそろえる:申請書だけでなく、試算表、売上台帳、前年比較表などを準備し、年間所得の見積もりを具体的に説明します
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